
再起業を志す。
それは幸せな決断だと思う。
[生まれと育ち]
私が生まれたのは、結構な貧困家庭だった。
父親はギャンブルで借金を次々と作るダメおやじの典型で、小学4年生の時に両親は離婚。
引っ越しの日、泣きながら玄関をバタンと閉じてトラックに乗り込んだことをよく覚えている。そうして母親と兄と3人の生活が始まったのだ。
母親は具合が悪くても仕事を休むことなく私たち兄弟を育ててくれた。仕事に対しての責任感、生活をすることの大変さ、子供を守る親の責任感。すべて母親の背中を見て育った。
そんな私は、中学になってアルバイトを始めた。当時仲が良かった友達の親父さんは工場を経営していて、人手を探していたこともあり、内緒でアルバイトさせてもらった。
子供ながらに油まみれの作業着を着て働く友達の父親を見て、初めて「社長ってかっこいい」とあこがれた瞬間だった。この経験が、後の自分の人生に大きな影響をもたらしたことは間違いないだろう。
[学生時代と美容師時代]
それから私は中学を卒業し、美容師になった。
学生時代に付き合っていた女性に影響されて選んだ職業だったが、次第に熱を持って取り組む大事な職業になりつつあった。
しかし美容師の仕事は見た目よりハードで長時間労働、低賃金。副業でアルバイトをしながら必死に働いてお金を稼いでいた。「社長になりたい」という夢は、そう簡単に叶えられるものではないと知った。
[家族、そして独立し社長へ]
そんな私も20代で長男と長女を授かり、父親になった。
長女が生まれた23歳の時に、「美容室Fit」を開店。ついに独立を実現し、社長になることが出来たのである。
勤めていた頃は店の看板と集客力と長年かけて築いてきた信用、実績で自分も恩恵を受けていただけだった。しかしこれからは、一から自分でそれらを積み上げていかなくてはならない。
試行錯誤するなか、10年後に商品開発した世界初の真っ黒なシャンプー【元祖炭シャンプー】が大ヒット。テレビ東京WBSトレンドたまごに取材してもらったことがきっかけで、マスコミ取材が立て続けに行われた。
NYに支社を設立して海外移住。
再びマスコミに取り上げられ、商品が大ヒット。
この時の私は、いわゆる成功者の仲間入りを成し遂げたのである。
「きっとこのままずっと…」
その油断が、大きな命取りとなった。
売り上げの落ち込み。
新たに開発した商品が、売れ残り在庫の山となる。
父親からしつこく金を無心される。
売り上げ不振で、経費などをキャッシングして支払うしかなかった自転車操業の日々。
うつ病の発症。
そして、ついに倒産の日を迎えることになる。
関係者、お客様、家族には迷惑をかけ、家から一歩も出られなくなった。心配してくれる人達はいたけれど、それでも一歩踏み出す気力すらなかった。
一年余りの引きこもり生活を過ごし、ますます社会から遠ざかっていくのを感じていたのである。
そんな私が、なぜ立ち直ることが出来たのか。
それは、人から求められる喜びを知ったからである。
ゴミ出しに玄関から一歩出たあの日、家内から言われた「ありがとう」の一言。
「俺は今でも父さんのことを、世界一尊敬している」という長男の言葉。
人は誰かの言葉によって生かされているのだと、
私はその日、心から実感したんだ。
その当時50歳を過ぎた私を雇ってくれたカット専門店。
元経営者というプライドも、いつの間にか忘れ去られていった。
働くことの出来る幸せ、誰かの為になれる喜び。
そういったものが、私の心を満たしてくれた。
三年間の再修業を経て、再起業したいと強く想い決意することになる。
[再起業]
当時は再起業を支援する仕組みはなく、苦労を強いられた。
しかし、「やらなかったことを後悔する」ことだけは絶対にしたくなかった。
活動をしていく中で、倒産や破産をした経験者の話を聞いた。
自分と同じような経験をしている人が、何人もいるということを知った。そこで、今までの成功体験、失敗体験を活かせる仲間を増やす事を目的とし、日本再起業支援協会を創設した。
・課題を抱える経営者からの相談をボランティアで受け付ける
・Zoomを活用したオンライン相談
・日本再起業支援協会の活動や対談動画をYouTube配信
・成功体験失敗体験を基に仲間と共に新しいビジネスモデルプロジェクト
など、様々な試みを行っている。
似た境遇の仲間が集まって同じ方向を目指すことで、お互いを支え合うことができる仕組み、コミュニティーである。
「一度失敗したら人生終わり。ではない」
私のように、事業に失敗している人が沢山いる。
私より困難な状況や、壮絶なご経験をされている方も少なくない。
そんな方々には、同じ境遇の仲間が沢山いるということを知って頂きたい。
そして、お互いに支え合う仕組みによって、今後は再起業に限らず、受験や就職、生活などの大きなくくりで再チャレンジをサポートさせて頂きたい。
現在も私は、仲間と共に貴重な経験を基にした新しいビジネスモデルプロジェクト進行過程である。
若かったころの創業当時のワクワク感や高揚感が生きがいへと繋がっている。
やっぱり挑戦するって楽しい。
そんな思いを、皆さんと共有したいと思っている。
日本再起業支援協会
代表理事 清水秀次